口腔機能低下症とは?

「口腔機能低下症」とは、加齢や生活習慣、疾患などによって、お口の機能が少しずつ低下している状態のことです。
- まだ食べられるから大丈夫
- 年齢のせいだから仕方ない
と思われがちですが、実は放置すると全身の健康に大きく関わります。

当院で口腔機能低下症について考えるようになったきっかけは、長く通院して頂いている患者様たちが五十代くらいからむせやすくなったり、食べるのが遅くなったり、お口の乾きを訴えたりすることが増えてくるのを目の当たりにしていることによります。
これまで主に虫歯や歯周病を治療/予防してきましたが、「お口の機能」が衰えてくるのを防ぐことが急務だと感じています。
最近ではNHKなどテレビでもよく取り上げられていることから患者様の関心、ニーズも高まりつつあります。
なぜ口腔機能低下症を放置してはいけないのか
お口の衰えは、全身の衰えにつながります
口腔機能低下症では、次のような変化が起こります。
- 食べこぼしが増える
- むせやすくなる
- 滑舌が悪くなる
- 硬いものが食べにくい
- 口が乾く
- 食事に時間がかかる
初期は小さな変化ですが、放置すると次のようなリスクがあります。
① 低栄養・筋力低下
食べにくさから、やわらかい物ばかり選ぶようになります。
すると、
- タンパク質不足
- 栄養バランスの偏り
- 筋力低下(サルコペニア)
につながります。
特に高齢者では、転倒や寝たきりの原因になることもあります。
② 誤嚥性肺炎のリスク

飲み込む力が低下すると、食べ物や唾液が気管に入りやすくなります。
これが「誤嚥(ごえん)」です。
誤嚥を繰り返すと、誤嚥性肺炎を起こす危険があります。
高齢者の肺炎は重症化しやすく、命に関わることもあります。
誤嚥(ごえん)とは
食べ物や飲み物が、食道ではなく気管に入ってしまうことです。
③ 認知機能・生活の質(QOL)の低下
「話しにくい」
「食事が楽しくない」
という状態が続くと、人との会話や外出が減り、心身の活動性も低下します。 近年では、
- フレイル(虚弱)
- 認知機能低下
との関連も注目されています。
④ 早期発見なら改善できる

口腔機能低下症は、“年齢だから仕方ない”ではありません。
早めに気づき、適切なトレーニングや治療を行うことで、改善や進行予防が期待できます。
お口の機能低下(オーラルフレイル)は、全身のフレイル(虚弱)の初期兆候と考えられています。
放置すると、筋力の低下や社会的な孤立を招き、最終的には生活機能の低下につながる可能性があるのです。
口腔機能検査の方法
口腔機能低下症は、複数の検査を組み合わせて診断します。
代表的な検査をご紹介します。
① 口腔衛生状態の検査

お口の中の汚れや舌苔(ぜったい)の付着状態を確認します。
お口の清潔状態は、
- むし歯
- 歯周病
- 誤嚥性肺炎
にも大きく関係します。
② 口腔乾燥検査

お口の乾燥状態を測定します。 唾液には、
- むし歯予防
- 飲み込み補助
- 細菌抑制
など大切な役割があります。
③ 咬合力(こうごうりょく)検査

「噛む力」をみるため、残存歯数を確認します。噛む力が低下すると、
- 食べられる物が限られる
- 栄養状態が悪化する
原因になります。
④ 舌・口唇運動機能検査(オーラルディアドコキネシス)
「パ・タ・カ」をできるだけ速く発音していただきます。
舌や唇の動きを確認する検査で、
- 話す力
- 食べ物を送り込む力
を評価できます。
⑤ 舌圧検査

舌で押す力を測定します。
舌の力は、
- 飲み込む力
- 食べ物をまとめる力
に重要です。
⑥ 咀嚼機能検査

グミゼリーなどを噛み、どれくらい細かくできるかを調べます。
「しっかり噛めているか」を客観的に確認できます。
グミゼリーをよく噛んでコップに吐き出し、
ブドウ糖の量を計測することで、よく噛めているか調べます。
⑦ 嚥下機能検査
飲み込みの状態を確認するため、問診を行います。
口腔機能低下症の改善方法
口腔機能は適切なケアとトレーニングで改善が期待できます。
検査結果を元にトレーニングをご紹介し、やり方や効果などをご説明します。
① お口の清潔管理

まず基本となるのが、毎日の口腔ケアです。
- 正しい歯磨き
- 舌清掃
- 入れ歯清掃
- 定期的な歯科受診
により、お口の環境を整えます。
② スプーンプレス、嚥下おでこ体操

舌の力や飲み込む力をトレーニングすることで、スムーズに食事がとれることを目指します。
③「パ・タ・カ・ラ」体操
それぞれ10回ずつ3周繰り返すことで、スムーズに飲み込めることを目指します。
④「あ・い・う・べ」体操

ゆっくり、お口を大きく動かし30回繰り返すことで、滑舌もよくなります。
⑤ 舌回し
口を閉じて歯に沿って舌を大きく回します。連続10回まわしたら、逆回りに10回まわします。
唾液の分泌量が増え、食べ物を食べやすくなります。
⑥ 唾液腺マッサージ

耳下腺、顎下腺、舌下腺を優しく刺激することで、唾液の分泌量を増やし、食べ物を食べやすくすることを目指します。
⑥ 歯周病の治療と、必要に応じて被せ物や入れ歯等の作り直し
歯周病の改善とともに、適合の悪い被せ物や入れ歯を見直し、お口の機能を整えます。
⑧ 定期的な口腔機能管理
口腔機能低下症は、継続的な管理が大切です。
定期的に検査を行い、
- 現在の状態確認
- トレーニング効果判定
- 早期変化の発見
を行います。
こんな症状はありませんか?
- 食べこぼしが増えた
- むせやすい
- 滑舌が悪くなった
- 硬い物が食べにくい
- 口が乾く
- 食事に時間がかかる

ひとつでも気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。
お口の健康は、全身の健康につながっています。

